今までに何十件という治療院を渡り歩いても、一向に改善されなかったという70代の方が、3か月ほど私の施術をうけてくださり、長年の肩の痛みやつらさが大分楽になってこられました。
いい調子!と思っていたころ、「今日は膝が痛くて」とうったえられました。
寒い中、結婚式に出席し、ずっと履いていなかった高いヒールで、長時間ずっと立ちっぱなしだったのが、膝に負担を掛けてしまったのでした。
その日は施術をして、少し様子を見ていただくことにしました。
その次にお見えになると、まだ膝が痛むとのこと。
今回は旅行に行かれた、とのことで、それがまた負担になったのかな?と思いました。
しかし、色々お聞きしても、特にすごい負担ではなかったようでした。
おかしいな、と思いつつ、施術をしていっても、膝は前回よりむくみがひどく、腫れているような感じで、これは水がたまっているかもしれない、と思われました。
さらにお話しを伺っていくと、原因がはっきりしました。
結婚式のあと、膝が痛かったので、いつも通っているジムで筋トレをした、というのです。
スタッフの方に、「膝周りの筋肉をつけるといい」と言われ、膝に重いおもりを乗せて、膝を上げる筋トレをした、というのです。
しかも、回数を増やした方がいい、と週に3回も通ったとのこと。
私でもそんなことをしたら、一発で痛めるだろうな、と思うことを、70代の方が、痛めている膝におもりをのせて、それを持ち上げる筋トレを、週に3回もしていただなんて!
考えただけでもぞっとしました。
すぐにそれは止めてただくようにお伝えし、しばらく大事にして、普通の日常生活を送って頂くよう、お願いしました。
その方は真面目な性格のために、スタッフの方のいうことに素直に従い、一生懸命痛みをがまんしてがんばってしまったのでした。
「私にとっては苦行でした。それはもう辛くて辛くて。ジムの帰りは余計に膝が痛くなっていました。でも、がまんしないとよくならない、と思って通ってしまいました。」
私はこのブログや、直接患者様方に、ずっとお伝えしてきましたが、身体はつらい、苦しい、痛いということを感じると、ますます緊張して歪んでいきます。
つらい、苦しい、痛い、という感覚は、「やりすぎだよ」「何かおかしいよ」「それは違うよ」ということを教えてくれる、身体のサインです。
身体は心地いい、ということを感じられないと、リラックスして、力をぬくことができません。身体は心地いい、安心、という感覚によって、整うのです。
私たちは、子供のころから、頑張らなくてはいけない、苦しみを乗り越えないといい状態になれない、と教え込まれてきました。
楽をすることは、道徳的に許されないような風潮で、楽する=怠け者、だらしない人間、だめな人間という見方をされてきました。
しかし、身体が楽な状態でなければ、自分がつらいだけでなく、本来の能力も発揮できず、結果的に周りの人にストレスを与えてしまうことにもなりかねません。
そうは言っても、長年染みついた「頑張り癖」は、充実感や達成感を感じられることもあり、なかなか抜けるものではないでしょう。しかし、施術を通して身体が楽な状態や、力の抜ける感覚がわかってくると、「なんだ、がんばりすぎてもしょうがないんだ」と実感できるようになっていきます。
人にいい、と言われたから、とか、苦しみを乗り越えないと良くならない、という情報や思い込みに惑わされず、ご自分の身体がどう感じているのかに耳を傾け、それを基準にして身体にとって心地いいことをなさって頂きますよう、私はこれからも何度でも繰り返し皆様にお伝えしていきたいと思っております。