最近はあまりメディアにでなくなったようですが、一時期「古武術」というものがよくテレビや本屋さんで見受けられました。
古武術は身体に無理なく、自然に動かす身体操作を行うので、力の弱い女性でも楽に人を動かせたり、倒せたりできる、ということで、介護にも応用されています。
私が古武術を知ったのは、患者さんが貸してくださった本でした。「触れられた、という実感のないままに、気づいたら倒されていた、それも力ずくではなく、やられた!という感じがまったくない。しかも倒されたのに、なぜか気持ちいい・・」
何かはわからないけれど、日常私たちが使っている身体の使い方、力の出し方とは全く別の原理によって、人が倒れてしまう古武術の身体操作。
武術という、やるか、やられるか、という究極の人との対峙の中にあっても、そこには争いがなく、あるのは「つながり」「愛」「一体感」「対等」・・・???
そんな不思議な感覚を味わってみたくて飛び込んだ古武術の世界。
初めは頭に一杯???がまわっていたけれど、色んな先生に不思議な体験をさせていただくうちに、施術と共通する、ということが身体で感じていきました。
今は仕事が忙しくて、稽古もなかなかいけない状態なのですが、古武術で学んだことは、日々施術の中で実践しています。
ともすると、施術はやってあげる人、治してあげる人=主体が施術者で、やってもらう人、治してもらう人=客体が患者様になったり、または反対に患者様は神様です、とばかりに施術者が下手になり、患者さんのいいなりになってサービスを行う、という場合が多いかと思います。
そして、施術では強い力をかけてぐいぐい押したり、揉んだり、これが正しい状態だと矯正したり・・施術者主体の力技、になってしまうこともよくあります。
また、施術者が専門家で、患者さんは素人、という間違った認識が双方にみられることもしばしばです。
でも、私はそうでないところを目指しています。
施術の主体、主人公は患者様。
施術者は患者様の感覚、身体の状態や動きを尊重する。
そして、患者様と施術者が協力することで、お互いの身体能力が発揮され、患者様の身体が治ろうとするプロセスが進行していく。
もちろん、施術者は直接患者様のお身体に触れさせていただくわけですから、それはもう、一生をかけて学び続け、技術を磨いていかなくてはなりません。
また、お身体の状態がどうなっているのかを説明したり、アドバイスをさせていただくこともあります。
しかし、あくまで身体が治っていくのは、ご自身の身体がしてくださることなのです。
素人だから身体のことはわからない、とおっしゃる方もおりますが、それは違います。
ご自分がどう感じるのか、身体はどうなっているのか、どうしたいのか、何をうったえているのか。
いい感じ、心地よい、または痛い、つらい、違和感がある、なにか変だ・・
身体の感覚に耳を傾け、対話し、味わう。
その過程を通じて、身体が本来の心地よいあり方を取り戻していく。
そのプロセスが進行するよう、施術者はお手伝いをするだけなのです。
患者様と施術者が対等な関係にあって、感覚を共感し、共鳴する、そのプロセスを経て患者様の身体が、時に劇的に変化していくのを目の当たりにするたびに、つくずく身体はすごい!と思い、感動します。
これからも日々、自分も患者様のともに心地よい感覚を共有しあい、患者様の身体が回復するお手伝いをさせていただけるよう、もっと精進していきたいと思います。