身体は物理的、心理的、環境的ストレスや、生活習慣等によって歪みます。身体の歪みや緊張は全身の筋肉や関節、内臓へ負担をかけ、神経伝達や、血流に影響を及ぼします。その結果、様々な痛みや不調、違和感を生じさせます。
身体は元々自身で緊張を緩めたり、歪みを整える調整力を持っています。
クラニオ整体では身体の持つ自己調整力を発現させて、身体を整える施術をしていきます。
1、身体の歪みを引き起こす原因
2、随意運動と不随意運動
3、錐体外路系の活性化による身体の反応
4、重力からの解放と身体のバランス調整
5、ストレスからの転換
身体の歪みは以下のように様々な要因で歪みます。
・ 偏った筋肉の使い方
・ 偏った体重のかけ方
・ 筋肉疲労
・ 運動不足
・ 精神的ストレス
・ 感情の抑圧
・ 自律神経の乱れ
・ 内蔵機能の低下、不調
・ 冷え
・ 過去の外傷(古傷)手術
・ 栄養の偏り
・ 過食
・ 薬の長期使用
身体はなぜ不調なのか、痛いのか、歪んだのかを全部知っています。
身体に問いかけると、身体が答えを教えてくれます。
私たちが身体を動かすときには、2つの経路による運動が行われています。
一つは、自分の意思で、意識して動かす経路です。
もう一つは自分の意識ではなく、身体が無意識に動かす経路です。
自分の意思で、意識して動かす経路を、錘体路系の随意運動、一方の意思とは関係なく身体が無意識で動かしている経路を、錐体外路系の不随意運動といいます。
例えば、立っていて物を取ろうとした時、手を伸ばして物を取る、という動きが錘体路系の随意運動で、無意識に身体が倒れないようにバランスを取るよう、筋肉をコントロールしているのが、錐体外路系の不随意運動になります。
しかし、この動きは厳密に分けられるものではなく、二つの経路の運動が協調して働くことで、私たちは身体のバランスを保ち、的確に動くことができます。
また、錐体外路系の不随意運動は、身体を守る反射運動も起こします。
くしゃみや咳、嘔吐反射は、身体から異物を排除する動きです。まばたきも目にゴミが入らないようにする動きです。寒い時に身体が震えるのは、筋肉が熱を産生する動きです。
身体が緊張した時、のびをしたり、あくびがでたり、震えたり、貧乏ゆすりをするのも身体を緩めようとする動きです。
寝ている時に寝返りをうったり、のばしたり、様々に動くのも、起きている時に掛かった負担を緩めてバランスを回復させる動きです。
このように、錐体外路系の不随意運動は、身体が無意識にバランスを取ったり、反射を起こして身体を守ったり、緊張を緩めようとする自己調整運動です。
この自己調整運動が適切に行われることで、私たちは健康を保つことできるのですが、現代では精神的、身体的、環境的ストレスが掛りやすくなっている上、休息がとれなかったり、無理を重ねてしまうこともしばしばです。
自身の身体の声を聴くよりも、周りや状況に合わせて我慢をしすぎたり、外部の知識や情報に頼ってしまって、頭で心と身体の自然な働きを抑え込むことが多くなってしまったように思います。
その結果、本来の自己調整力が鈍って働きづらくなり、心と身体を緩めたり、バランスを回復することができず、緊張が抜けずに疲れやすくなったり、不眠や無気力、内臓機能の低下や身体の痛みなど様々な不調が生じます。
身体が元々持っている自己調整力を活性化させることで、バランスを回復し、本来の健康を保つ力を取り戻すことができます。
施術で身体に刺激を入れ、錐体外路系が活性化されると、身体には様々な反応が起こってきます。
全身がじんわりする、じんじんする、ぞくぞくするなどの反応や、刺激している所と違う所に感じる、つながっている、流れているなど感じられることもあります。
お腹が鳴る、咳や涙、欠伸が出る、痛みが違う所に出てくる、呼吸が深くなるなどの反応や、色んな色が見えて、消えたりまた出たりする、という反応など、身体の内部では実に様々な反応が生じます。
また、身体に動きが出てくることもあります。
頭、首、腕、背中、肩、手首、骨盤、脚、足首、指など、位置を変えたくなったり、曲げたり伸ばしたり回したりなど、これも多彩な反応が生じることがあります。
このような動きが生じてきたら、身体がどうなりたいのか、どう動いているのかを感じて、抑え込まずに身体に任せてもらいます。
すると、身体は自ら楽になる、ゆるむ動きをしていきます。
そうして緊張をゆるめ、身体を整えていくのです。
身体を緊張させ、歪みを生じさせる原因は様々ですが、身体にとって常に負荷がかかっているのが「重力」です。
私たち人間は、細長い脊柱を垂直に起こして、その上に重い頭蓋骨を乗せています。それを二足で運んで移動しています。
人間は四足という安定した構造から、不安定な二足歩行へと進化する過程で、重力に上手く対応できるよう、巧妙な仕組みを身につけました。
それがS字カーブを持った脊柱と身体のバランスを調整する錐体外路系の不随意運動です。
脊柱のS字カーブは頭蓋骨や、重いものを持った時に上手く重さを分散させて支えつつ、身体を様々な方向に動かせるよう、強さと柔軟性を持った構造になり、また倒れないようにバランスを取る錐体外路系の調整運動によって、重力に適応し、複雑な動きができるようになりました。
しかし、縦長になった構造では、足元から頭頂まで血液と、自分の身体を常に重力に逆らって持ち上げなくてはなりません。そのため長時間の同じ姿勢(特に前かがみの姿勢、座りっぱなしや立ちっぱなし)、偏った体重の掛け方や身体の使い方など、様々な要因で身体が歪んだり、疲労等によって筋肉が弱くなると身体を支えられなくなり、血液循環も滞って、重力に上手く対応することができなくなります。
そうすると、さらに筋肉や骨格に負担がかかり、がんばらないと身体を支えたり動くことができなくなるため、益々身体が歪み、緊張が抜けず疲れやすくなります。
人間は二足歩行という不安定な構造のため、大人になって年を重ねるほど転倒することが潜在的に恐怖となっていきます。
動きづらさやバランスの悪さを感じると、筋肉をつけなくては、という発想になりがちですが、バランスが崩れたまま筋肉を鍛えても、疲れやすくなったり、逆に動きづらくなることも起こりえます。ですからその前にまず身体のバランスを調整しておくことが大切です。
施術で錐体外路系が活性化されると、身体は自分の重さと重力を利用して、身体を整えていきます。
身体の歪みや緊張は、触ったり目で見て確認できるだけでなく、動きにも現れています。
身体に歪みや緊張があると、左右や前後、回旋の動きに偏りや可動域の減少が見られます。その動きの偏りや減少を調整することで、身体がゆるみ、歪みが整います。
動きの調整は、体操やストレッチのように硬い筋肉を伸ばしたり、動かないところに力を掛けて動かすのではありません。(それは錘体路系による身体へのコントロールが主体となっています)
錐体外路系の調整運動は人それぞれの個性があり、どれ一つとして同じ調整はありませんが、人間の基本の動きの調整は全ての方に起こります。その調整はやじろべえの動きになぞらえることができます。
やじろべえは、軸を支点に右、左、前、後などに動きます。
たとえば右に大きく傾けると、反動で左側に大きく動き、その後左右の動きを繰り返しながら徐々に振幅の幅が小さくなって、元に戻ります。
やじろべえはかなり傾いても倒れませんが、先ほど述べたように人間は転倒することに潜在的な恐怖があるため、通常は重心を大きく崩さないようにしながら、どこかを緊張させつつ動いています。
ところが、施術でご本人の身体を術者が軽く支えて、重力から少し浮かせるような状態を作り、動きやすい方、楽に動ける方に動いて頂くことで、防衛の緊張がはずれやすくなります。そこから身体は自分で緩める順番や方法を決めて修正していくと、驚くほど可動域が広がったりすることもあります。
(ただし、元々人間は機能的、構造的に左右対称ではないため、完璧に偏りがなくなることはありませんが、偏りや緊張が修正されると、とても楽になります。)
この動きがさらに活性化されると、そこから違う動きへと展開して、回ったり、ゆすったり等進行していくこともあります。
また、身体の調整は、ダイナミックに展開するだけでなく、静かに後ろや前、右や左に倒れていったり、丸まってうずくまったり、微妙に揺れ動いたりして、力を抜いていくこともあります。
このように身体に生じる反応は、実に多彩で複雑で、とても言葉で伝えきれるものではありませんが、錐体外路系による自己調整は、その人の身体が必要としていることを、必要な時に発現させて、身体自身が調整をしていきます。
それは、外部から借りてきたものや、押し付けられたものではない、また頭で考えたものでもない、心と身体の内面から生じた、あなただけの自律的な完全オーダーメードの調整法です。
身体の自律性が発揮されることは、重力からしばし解放されるのみならず、様々な縛りやしがらみ、固定概念から自己を解き放ち、自由になることでもあります。
先程、錐体外路系による基本的な身体の調整運動を、やじろべえの動きになぞらえて見てきました。やじろべえを大きく傾けると、反動で元に戻っていきますが、人間にこの調整運動が生じる原動力となっているのが、実は「ストレス」なのです。
心と身体に掛かるストレスは多かれ少なかれ、身体に緊張を生じさせます。この緊張は「力」です。ストレスが強いほど、身体の内部には緊張(力)が高まります。この高まった緊張(力)をどこかで放散できれば、身体はゆるみ、元に戻るのですが、緊張が貯め込まれていくと、身体の内部は力が籠った状態になります。(これが疲れやすさや、精神的不安定さ、痛み、不調などとして感じられます。)
施術で錐体外路系を活性化させると、この身体の内部に籠った力が原動力となって、身体が反応をしてきます。
その籠った力が大きいほど、身体の反応も多彩で複雑であったり、反応時間も長くなったり、動きが大きく、時には激しくなったりします。
このような身体の反応を目の当たりにすると、ストレスで掛かった負担、「力」を、自身を調整するための原動力として、身体は上手く転換することができる、と痛感します。
ストレスが強ければ強いほど、それを上手く転換できると、心と身体はそれだけ強くしなやかに、軽やかになります。
そのように、マイナスもプラスに転換し、解放する力を、身体は持っているのです。
身体の声に耳を傾け、身体の調整力を信頼して任せると、本来の生命力が呼び覚まされ、生きる力が内面に充実してくることと思います。